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02月18日 夢喰いメリー 第6話「夢邂逅」


私がこの島に戻ってきてから、もう半年が過ぎた。
寮で生活していたときは一人ぼっちだったけど、今はそうじゃない。
隣にいるのは、二年間も離れていた私の兄。
また会えた時は本当に嬉しかった。
本校三年生の兄さんはもうすぐ卒業。
卒業式の時ぐらい、お父さん達は帰ってくるのかな。
急に帰ってきたら驚くだろうけど、でもきっと嬉しいんだろうな。
普段は私と二人っきりだもんね。
そりゃ、私といて退屈だって言われたら悲しいけど、さ。
あ、でも、ずっと二人っきり・・・ってことはないよね。
私がいない二年間に、「サポート部隊」なんて名前がつくぐらい兄さんの世話をしてくれたんだもん。
朝だって起きられないし、家事だってほとんどしない兄さんだから。
みんながいてくれなかったらこの家がどうなってたかなんて、考えたくもないです。
そんな卒業を目前に控えた今日、私はずっと前から準備していたことを実行しようと思っている。
多分、兄さんのことだから、今日が何の日か、なんて気にも留めてないでしょうけど。
いつもよりちょっとだけ早く目が覚めた私は、準備していたものの最終チェックをした。
うん、ばっちり。
きっと兄さんも喜んでくれる。
最初は照れ隠しみたいな感じで、そして絶対に口に出して言ってくれないだろうけど。
それでもいいの。
兄さんが喜んでくれてるって分かったら、私も嬉しいから。
いつものように朝ごはんを作っていると、お醤油を切らしていることに気づいた。
ちょっと買いに行こうかな。
すぐ近くだし、急いで行けば大丈夫。
近くのコンビニに買いに行くと、その帰り道で「サポート部隊」で一番お世話になっただろう人と出会った。
「あ、おはよう。」
「おはよう。」
「こんな朝早くからどこへ行くんですか?」
「ちょっと、学校にね。」
学校?
兄さんと同じ学年だから、当然彼女も今は学校は休みのはず。
三年生って、試験が終わったら卒業式まで休みだもん。
だから私もちょっとだけ仕事が楽・・・って、そういう問題じゃないよね。
ちょっと不思議に思いながら、私は家に戻った。
朝ごはんを作り終えて、私は兄さんを起こしに部屋へ向かった。
放っておくと昼過ぎまで寝てるんだもん。
いくら休みだからって、不健康すぎます。
それに、こんなにいい天気なんだからお布団だって干したいじゃないですか。
それに・・・、今日は・・・ね。
もしかしたら兄さんから誘ってくれるかな、なんて期待してたりして。
「兄さん、そろそろ起きて下さい。」
私はそう言いながら部屋の扉を開けた。
いつものように返事が無い。
はぁ・・・やっぱり今日もか。
もうちょっと素直に起きてくれると嬉しいんですけどね。
そう言っても仕方が無いし、私はベッドへ近づいた。
すると妙な違和感を感じた。
何だかいつもと光景が違う。
「あれ?兄さん?」
私は呟きながら、部屋を見回した。
「もう、どこに隠れてるんですか?早く出てきて下さい。」
家の中も探し回ったけど、どこにも兄さんの姿は見当たらなかった。
昨日はちゃんと部屋で寝たはず。
ベッドにも寝ていた跡が残ってるし。
ちゃんと「おやすみ」って言ってから私も自分の部屋に戻って寝たし。
夜中のうちに出かけたのかな?
そんなことないよね、それに夜中に行くところなんて無いはずだもん。
もしかして、さっき私が買い物に出かけた時?
そう言えば私が帰ってきた時、玄関に靴が無かったような・・・。
そっか、ついさっき出かけたんだ。
でも、こんな朝早くからどこに?
きっとすぐに戻ってくるよね。
それまで朝ごはんを食べるのは待ってよう。
お味噌汁は温めなおせばすむことだし。
お魚はちょっと火を通せば大丈夫だよね。
一時間が経っても兄さんは戻ってこなかった。
もう、どこに出かけたんですか?
せめて書置きぐらい残してから出かけて下さい。
仕方が無いから一人で朝ごはん食べちゃいますよ?
一通りの家事を終えると、そろそろお昼が近づいている。
兄さん、どこに行ったんですか。
そろそろ携帯に電話してみようかな。
でも、
「何の用?」
って聞かれたら困るし・・・。
特に準備をしていたことも無いし、まさか島の外に出たってことは無いよね。
仕方が無い、探しに行こう。
私は着替えてから家を出た。
兄さんの行きそうなところは・・・っと。
あ、その前にお隣さんに聞いてみようかな。
もしかしたら何か知ってるかも。
でもそのお隣さんも留守だった。
普通に考えれば彼女は学校か。
いきなりアメリカから帰ってきたと思ったら、学園の講師になっちゃうんだもんね。
兄さんたち学生とは違って、今日は平日だから休みじゃないよね。
公園、近所のコンビニ、商店街の本屋、並木道、兄さんの行きそうなところは全部回った。
あ、学校。
私たちが通学路にしている並木道を抜けると、目の前に学園が見えた。
そう言えば朝、学校に行くって言ってた人がいたっけ。
兄さんも学園にいるのかな?
まさか、呼び出し?
でもそれなら彼女は違うはずだよね。
とにかく疑問を持ちながら、私は校内へ入った。
校内を探す前に、まずは保健室へ寄らなくちゃ。
私は学園の中じゃ服装が決まってるもんね。
保健室へ入ると私をこの学園へ呼んでくれた人と出会った。
「あれ?今日は休みが欲しいって言ってたよね?」
「あ、ちょっと学園に来る用事があったので、白衣を着ないと、って・・・。」
そう言いながら私は白衣を着て保健室を出た。
とにかく、いるかもしれない兄さんを探さなきゃ。
私が廊下を歩いていると、朝の彼女を見つけた。
私は隠れながら彼女の後についていった。
彼女が入っていったのは三年二組の教室だった。
彼女は一組のはず・・・。
それに、そこは兄さんの教室。
ドアの隙間から覗いてみると、なにやらパーティのようなものが開かれていた。
兄さんがいて、みんながいて、お隣さんもいて。
お菓子を食べたりジュースを飲んだりしながら楽しく騒いでいる。
兄さんがパーティに参加するのは兄さんの勝手です。
でも、みんながいるならどうして私も呼んでくれなかったんだろう。
私は学生じゃないから暇じゃないと思ったのかな?
でもせめて声をかけるぐらいしてくれてもいいのに。
そう思うと、少し悲しくなってきた。
「先生ー、怪我しましたー。」
急に声をかけられた私は驚いて声を出してしまった。
その声に気づいた兄さんが声をかけてきた。
「ん?誰かいるのかー?」
教室の中が静まり、みんなの視線が入り口に集中する。
私は怪我をしたと言うその子を手当てするために、と言う理由を勝手に作って保健室へ向かった。
手当てをするのは本当、だって私は見習いとはいえ学園の保険医だから。
でも本当は、私が覗き見していると思われたくなかったから。
特に兄さんには。
私が覗き見ていたところで、あの場にいた誰も怒らないだろう。
きっと私に気づいたみんなは声をかけながら輪に入れてくれる。
だけど、何だか嫌だった。
怪我をした子の手当てを終え、私は保健室を出た。
保健室のドアを閉めたところで、誰かが声をかけてきた。
「なんだ、もう来てたのか。」
私は兄さんに連れられて、教室へ向かった。
その途中で事情を聞かされた。
久しぶりにみんなで集まって騒ごうと言うことになったこと、みんなの思い出が一番多い教室で開くことになったこと、そして兄さんと私には最後まで秘密にしておこうと言う予定だったこと。
私たちより一つ年下の幼馴染がつい喋ってしまい、兄さんには先に説明したこと。
そして集合の時間に間に合うためには、私が買い物に行っていた間に家を出なくちゃいけなかったこと。
彼女が、さっきドアの前にいたのが私じゃないかと言ったため、兄さんが私を迎えに来たこと。
どうして書置きぐらい残してくれなかったんですか、私がそう言おうと口を開いた瞬間に兄さんから話してきた。
「お前をびっくりさせようと思ってな、そろそろ家に電話しようと思ってたんだ。」
もう、兄さんてばひどいんですから。
この様子だと、どうして「今日」なのか気づいていないんでしょうね。
みんなが私と兄さんに隠しておこうとした理由も。
兄さんと一緒に教室に入ると、すぐにみんなが声を出して私の方に駆け寄ってきた。
やっぱり私もこのメンバーの一員なんだよね。
そう思うと嬉しかった。
さっき悲しんでたのが嘘のように。
それから数時間、私もみんなと同じように食べたり飲んだりしながら楽しんだ。
私は毎日学園に行ってるけど、基本的にみんなと会うことはないから。
会おうと思えばいつだって会えるけど、みんなで集まって話す機会は兄さん達が休みに入ってから初めてだったから。
「あの、ちょっといいですか?」
彼女に声をかけられた私は、教室の隅に連れて行かれた。
「これ、後で渡しておいてくれませんか?」
それは小さな袋だった。
もちろん中身は見えなかったけど、大体想像はつく。
その後も同じようなことが何度か続き、結局その場にいた女の子全員から預かることになった。
「兄さんに直接渡せばいいんじゃないですか?」
私がそう言っても、みんな否定した。
そしてその理由は誰も言わなかった。
そろそろ日が暮れかけてきたところで、パーティもお開きとなった。
みんなで片づけをしている最中、私は彼女から耳打ちをされた。
兄さんがまだ「気づいていない」こと。
私に最初に気づかせてあげて欲しいということ。
そして・・・、私と兄さんの関係を気にしてくれていること。
私はみんなのことが好きだし、みんなも色々あったけど最後には私たちの関係を受け入れてくれた。
だからそんなことは気にしないでって言ったけど、
「でも、やっぱり・・・ね?」
って言ってくれた。
今は素直にみんなの好意に甘えていよう。
みんなのことも好きだけど、やっぱり一番好きなのは兄さんだから。
パーティの後、やっぱりみんな気を使ってくれて、私と兄さんの二人っきりで帰ることになった。
もうすっかり日も暮れて辺りは真っ暗。
そろそろいいかな、と思って私は準備していたものを取り出した。
「兄さん、これ・・・」
何だよこれ、と不思議そうにしながらもその袋を受け取ってくれた。
でも、まだ開けてくれない。
「別に今じゃなくてもいいだろ?」
「ミスター・かったるい」の異名を与えられた兄さんならではの発言です。
別に家に帰ってからでもいいんですけどね。
でも本当は朝のうちに渡して、お昼からは兄さんとデート・・・したかったな。
今日はお休みをもらったから、って一週間も前から言ってあるのに。
本当は気づいてない振りなんじゃないか、って思ってたのに。
もう、兄さんが気づくまでみんなから預かったものは渡してあげませんからね。
私は、兄さんと一緒に歩きながら家へと向かっていた。
桜並木を通り、商店街を通り、そろそろ家に着こうかという時。
私はついに言うことにした。
やっぱり、今すぐにでも気づいて欲しかったから。
「兄さん、さっきの渡したものが何なのか気にならないんですか?」
「気になると言えば気になるけど・・・」
「じゃあどうして開けないんですか?」
私は半ば強制的に兄さんに開けさせた。
それでもやっぱり気づいてくれなかった。
もう、本当に兄さんは鈍感なんですから。
「チョコレート?」
「兄さん、今日は何月何日ですか?」
「今日?えーっと・・・二月の十四日だろ?」
「今日が何の日だか知ってますか?」
「今日って・・・まさか・・・。」
「そう、そのまさかです。今日はバレンタインデーですよ。」
そうか、そういうことだったのか、と兄さんは答えた。
「何がですか?」
と聞くと、
「今日はちょっと拗ねてるように見えたからな。」
と言った。
私は別に拗ねてなんかいません。
「・・・なぁ、これからどこか出かけるか?」
「え?」
突然のことで私は驚いた。
言われた言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「今日はお前に悪いことしたしな。本当はこれを俺に渡して、バレンタインに気づいた俺とどこかへ出かけたかったんじゃないのか?でもあいつらとの待ち合わせに遅れるわけにはいかなくてさ。お前が醤油を買いに行ってるうちに出かけなきゃならなくてな。」
「知ってたんですか?」
「なんとなくそんな気がしただけだよ。テーブルの上には焼き魚があったのに、隣に置いてあった醤油さしには醤油が入ってなかったからさ。最近、たまに夜中に起きてたのはこれのためだったんだな。」
もう、兄さんってば。
気づいていない振りをしながら、知ってたんですね。
やっぱり兄さんには敵いませんね。
「でも、もう夜も遅いんじゃないですか?」
「それもそっか。じゃあせめて飯でも食いに行くか。」
「うん。あ、来月のお返し、期待してますからね。」
「来月?何かあったっけ?」
兄さんはちょっととぼけてみせる。
今の顔は、気づいた顔です。
隠したって駄目ですから。
「とにかく、今は飯を食いに行こうぜ。」
そう言って兄さんが先に歩き出す。
「あ、兄さん、待って下さい。」
少し駆け足になって兄さんに追いつく。
「・・・やっぱり、夜は寒いかな。」
そんなことを言いながら私は兄さんの腕に抱きついてみる。
「は、早く行くぞ。」
驚いて私を見たものの、私の腕を払うようなことはせず、兄さんはまたすぐに前を向いて歩き出した。
街灯に照らされた兄さんの顔が赤くなっていたのを見逃さなかった。
それから少し歩いたところで、兄さんがぼそっと呟いた。
「今日はお前が島に戻ってきてから初めてのバレンタインだったんだな。本当に悪かった。」
「今こうやって兄さんと歩けているだけで、そんなことは忘れました。」
みんなから預かったものは、家に帰ったらちゃんと渡してあげますからね。
でもその前に、私が作ったチョコレートの感想を聞きたい・・・かな。
もしも「まずい」って言われたら、また来年頑張るから。
でも、もし「おいしい」って言ってくれたら、その時は・・・。
初めての企画に挑戦してみました。
やっぱり文章を書くって難しいですね(汗)
なんとなく伝わったでしょうか?
登場人物の名前を出さないように頑張っていたら、ちょっと変なところも出てきてしまったり・・・
拙い文章ではありますが、もしよければ感想等お聞かせ頂けると嬉しいです。
また、今日限定でweb拍手を特別仕様にしています。
こちらのほうも覗いてやってください。
・・・多分「やっぱりか」と思われるかも知れませんが(爆)
画像は3種類用意しました。
今日頂いたweb拍手コメントと記事へのコメントに対するお返事は、今日の夜に別記事にてお返事します。
え?
これの登場人物が誰かって?
分かる人だけ分かってください(笑)
よろしければ押してやってください→
寮で生活していたときは一人ぼっちだったけど、今はそうじゃない。
隣にいるのは、二年間も離れていた私の兄。
また会えた時は本当に嬉しかった。
本校三年生の兄さんはもうすぐ卒業。
卒業式の時ぐらい、お父さん達は帰ってくるのかな。
急に帰ってきたら驚くだろうけど、でもきっと嬉しいんだろうな。
普段は私と二人っきりだもんね。
そりゃ、私といて退屈だって言われたら悲しいけど、さ。
あ、でも、ずっと二人っきり・・・ってことはないよね。
私がいない二年間に、「サポート部隊」なんて名前がつくぐらい兄さんの世話をしてくれたんだもん。
朝だって起きられないし、家事だってほとんどしない兄さんだから。
みんながいてくれなかったらこの家がどうなってたかなんて、考えたくもないです。
そんな卒業を目前に控えた今日、私はずっと前から準備していたことを実行しようと思っている。
多分、兄さんのことだから、今日が何の日か、なんて気にも留めてないでしょうけど。
いつもよりちょっとだけ早く目が覚めた私は、準備していたものの最終チェックをした。
うん、ばっちり。
きっと兄さんも喜んでくれる。
最初は照れ隠しみたいな感じで、そして絶対に口に出して言ってくれないだろうけど。
それでもいいの。
兄さんが喜んでくれてるって分かったら、私も嬉しいから。
いつものように朝ごはんを作っていると、お醤油を切らしていることに気づいた。
ちょっと買いに行こうかな。
すぐ近くだし、急いで行けば大丈夫。
近くのコンビニに買いに行くと、その帰り道で「サポート部隊」で一番お世話になっただろう人と出会った。
「あ、おはよう。」
「おはよう。」
「こんな朝早くからどこへ行くんですか?」
「ちょっと、学校にね。」
学校?
兄さんと同じ学年だから、当然彼女も今は学校は休みのはず。
三年生って、試験が終わったら卒業式まで休みだもん。
だから私もちょっとだけ仕事が楽・・・って、そういう問題じゃないよね。
ちょっと不思議に思いながら、私は家に戻った。
朝ごはんを作り終えて、私は兄さんを起こしに部屋へ向かった。
放っておくと昼過ぎまで寝てるんだもん。
いくら休みだからって、不健康すぎます。
それに、こんなにいい天気なんだからお布団だって干したいじゃないですか。
それに・・・、今日は・・・ね。
もしかしたら兄さんから誘ってくれるかな、なんて期待してたりして。
「兄さん、そろそろ起きて下さい。」
私はそう言いながら部屋の扉を開けた。
いつものように返事が無い。
はぁ・・・やっぱり今日もか。
もうちょっと素直に起きてくれると嬉しいんですけどね。
そう言っても仕方が無いし、私はベッドへ近づいた。
すると妙な違和感を感じた。
何だかいつもと光景が違う。
「あれ?兄さん?」
私は呟きながら、部屋を見回した。
「もう、どこに隠れてるんですか?早く出てきて下さい。」
家の中も探し回ったけど、どこにも兄さんの姿は見当たらなかった。
昨日はちゃんと部屋で寝たはず。
ベッドにも寝ていた跡が残ってるし。
ちゃんと「おやすみ」って言ってから私も自分の部屋に戻って寝たし。
夜中のうちに出かけたのかな?
そんなことないよね、それに夜中に行くところなんて無いはずだもん。
もしかして、さっき私が買い物に出かけた時?
そう言えば私が帰ってきた時、玄関に靴が無かったような・・・。
そっか、ついさっき出かけたんだ。
でも、こんな朝早くからどこに?
きっとすぐに戻ってくるよね。
それまで朝ごはんを食べるのは待ってよう。
お味噌汁は温めなおせばすむことだし。
お魚はちょっと火を通せば大丈夫だよね。
一時間が経っても兄さんは戻ってこなかった。
もう、どこに出かけたんですか?
せめて書置きぐらい残してから出かけて下さい。
仕方が無いから一人で朝ごはん食べちゃいますよ?
一通りの家事を終えると、そろそろお昼が近づいている。
兄さん、どこに行ったんですか。
そろそろ携帯に電話してみようかな。
でも、
「何の用?」
って聞かれたら困るし・・・。
特に準備をしていたことも無いし、まさか島の外に出たってことは無いよね。
仕方が無い、探しに行こう。
私は着替えてから家を出た。
兄さんの行きそうなところは・・・っと。
あ、その前にお隣さんに聞いてみようかな。
もしかしたら何か知ってるかも。
でもそのお隣さんも留守だった。
普通に考えれば彼女は学校か。
いきなりアメリカから帰ってきたと思ったら、学園の講師になっちゃうんだもんね。
兄さんたち学生とは違って、今日は平日だから休みじゃないよね。
公園、近所のコンビニ、商店街の本屋、並木道、兄さんの行きそうなところは全部回った。
あ、学校。
私たちが通学路にしている並木道を抜けると、目の前に学園が見えた。
そう言えば朝、学校に行くって言ってた人がいたっけ。
兄さんも学園にいるのかな?
まさか、呼び出し?
でもそれなら彼女は違うはずだよね。
とにかく疑問を持ちながら、私は校内へ入った。
校内を探す前に、まずは保健室へ寄らなくちゃ。
私は学園の中じゃ服装が決まってるもんね。
保健室へ入ると私をこの学園へ呼んでくれた人と出会った。
「あれ?今日は休みが欲しいって言ってたよね?」
「あ、ちょっと学園に来る用事があったので、白衣を着ないと、って・・・。」
そう言いながら私は白衣を着て保健室を出た。
とにかく、いるかもしれない兄さんを探さなきゃ。
私が廊下を歩いていると、朝の彼女を見つけた。
私は隠れながら彼女の後についていった。
彼女が入っていったのは三年二組の教室だった。
彼女は一組のはず・・・。
それに、そこは兄さんの教室。
ドアの隙間から覗いてみると、なにやらパーティのようなものが開かれていた。
兄さんがいて、みんながいて、お隣さんもいて。
お菓子を食べたりジュースを飲んだりしながら楽しく騒いでいる。
兄さんがパーティに参加するのは兄さんの勝手です。
でも、みんながいるならどうして私も呼んでくれなかったんだろう。
私は学生じゃないから暇じゃないと思ったのかな?
でもせめて声をかけるぐらいしてくれてもいいのに。
そう思うと、少し悲しくなってきた。
「先生ー、怪我しましたー。」
急に声をかけられた私は驚いて声を出してしまった。
その声に気づいた兄さんが声をかけてきた。
「ん?誰かいるのかー?」
教室の中が静まり、みんなの視線が入り口に集中する。
私は怪我をしたと言うその子を手当てするために、と言う理由を勝手に作って保健室へ向かった。
手当てをするのは本当、だって私は見習いとはいえ学園の保険医だから。
でも本当は、私が覗き見していると思われたくなかったから。
特に兄さんには。
私が覗き見ていたところで、あの場にいた誰も怒らないだろう。
きっと私に気づいたみんなは声をかけながら輪に入れてくれる。
だけど、何だか嫌だった。
怪我をした子の手当てを終え、私は保健室を出た。
保健室のドアを閉めたところで、誰かが声をかけてきた。
「なんだ、もう来てたのか。」
私は兄さんに連れられて、教室へ向かった。
その途中で事情を聞かされた。
久しぶりにみんなで集まって騒ごうと言うことになったこと、みんなの思い出が一番多い教室で開くことになったこと、そして兄さんと私には最後まで秘密にしておこうと言う予定だったこと。
私たちより一つ年下の幼馴染がつい喋ってしまい、兄さんには先に説明したこと。
そして集合の時間に間に合うためには、私が買い物に行っていた間に家を出なくちゃいけなかったこと。
彼女が、さっきドアの前にいたのが私じゃないかと言ったため、兄さんが私を迎えに来たこと。
どうして書置きぐらい残してくれなかったんですか、私がそう言おうと口を開いた瞬間に兄さんから話してきた。
「お前をびっくりさせようと思ってな、そろそろ家に電話しようと思ってたんだ。」
もう、兄さんてばひどいんですから。
この様子だと、どうして「今日」なのか気づいていないんでしょうね。
みんなが私と兄さんに隠しておこうとした理由も。
兄さんと一緒に教室に入ると、すぐにみんなが声を出して私の方に駆け寄ってきた。
やっぱり私もこのメンバーの一員なんだよね。
そう思うと嬉しかった。
さっき悲しんでたのが嘘のように。
それから数時間、私もみんなと同じように食べたり飲んだりしながら楽しんだ。
私は毎日学園に行ってるけど、基本的にみんなと会うことはないから。
会おうと思えばいつだって会えるけど、みんなで集まって話す機会は兄さん達が休みに入ってから初めてだったから。
「あの、ちょっといいですか?」
彼女に声をかけられた私は、教室の隅に連れて行かれた。
「これ、後で渡しておいてくれませんか?」
それは小さな袋だった。
もちろん中身は見えなかったけど、大体想像はつく。
その後も同じようなことが何度か続き、結局その場にいた女の子全員から預かることになった。
「兄さんに直接渡せばいいんじゃないですか?」
私がそう言っても、みんな否定した。
そしてその理由は誰も言わなかった。
そろそろ日が暮れかけてきたところで、パーティもお開きとなった。
みんなで片づけをしている最中、私は彼女から耳打ちをされた。
兄さんがまだ「気づいていない」こと。
私に最初に気づかせてあげて欲しいということ。
そして・・・、私と兄さんの関係を気にしてくれていること。
私はみんなのことが好きだし、みんなも色々あったけど最後には私たちの関係を受け入れてくれた。
だからそんなことは気にしないでって言ったけど、
「でも、やっぱり・・・ね?」
って言ってくれた。
今は素直にみんなの好意に甘えていよう。
みんなのことも好きだけど、やっぱり一番好きなのは兄さんだから。
パーティの後、やっぱりみんな気を使ってくれて、私と兄さんの二人っきりで帰ることになった。
もうすっかり日も暮れて辺りは真っ暗。
そろそろいいかな、と思って私は準備していたものを取り出した。
「兄さん、これ・・・」
何だよこれ、と不思議そうにしながらもその袋を受け取ってくれた。
でも、まだ開けてくれない。
「別に今じゃなくてもいいだろ?」
「ミスター・かったるい」の異名を与えられた兄さんならではの発言です。
別に家に帰ってからでもいいんですけどね。
でも本当は朝のうちに渡して、お昼からは兄さんとデート・・・したかったな。
今日はお休みをもらったから、って一週間も前から言ってあるのに。
本当は気づいてない振りなんじゃないか、って思ってたのに。
もう、兄さんが気づくまでみんなから預かったものは渡してあげませんからね。
私は、兄さんと一緒に歩きながら家へと向かっていた。
桜並木を通り、商店街を通り、そろそろ家に着こうかという時。
私はついに言うことにした。
やっぱり、今すぐにでも気づいて欲しかったから。
「兄さん、さっきの渡したものが何なのか気にならないんですか?」
「気になると言えば気になるけど・・・」
「じゃあどうして開けないんですか?」
私は半ば強制的に兄さんに開けさせた。
それでもやっぱり気づいてくれなかった。
もう、本当に兄さんは鈍感なんですから。
「チョコレート?」
「兄さん、今日は何月何日ですか?」
「今日?えーっと・・・二月の十四日だろ?」
「今日が何の日だか知ってますか?」
「今日って・・・まさか・・・。」
「そう、そのまさかです。今日はバレンタインデーですよ。」
そうか、そういうことだったのか、と兄さんは答えた。
「何がですか?」
と聞くと、
「今日はちょっと拗ねてるように見えたからな。」
と言った。
私は別に拗ねてなんかいません。
「・・・なぁ、これからどこか出かけるか?」
「え?」
突然のことで私は驚いた。
言われた言葉を理解するのに少し時間がかかった。
「今日はお前に悪いことしたしな。本当はこれを俺に渡して、バレンタインに気づいた俺とどこかへ出かけたかったんじゃないのか?でもあいつらとの待ち合わせに遅れるわけにはいかなくてさ。お前が醤油を買いに行ってるうちに出かけなきゃならなくてな。」
「知ってたんですか?」
「なんとなくそんな気がしただけだよ。テーブルの上には焼き魚があったのに、隣に置いてあった醤油さしには醤油が入ってなかったからさ。最近、たまに夜中に起きてたのはこれのためだったんだな。」
もう、兄さんってば。
気づいていない振りをしながら、知ってたんですね。
やっぱり兄さんには敵いませんね。
「でも、もう夜も遅いんじゃないですか?」
「それもそっか。じゃあせめて飯でも食いに行くか。」
「うん。あ、来月のお返し、期待してますからね。」
「来月?何かあったっけ?」
兄さんはちょっととぼけてみせる。
今の顔は、気づいた顔です。
隠したって駄目ですから。
「とにかく、今は飯を食いに行こうぜ。」
そう言って兄さんが先に歩き出す。
「あ、兄さん、待って下さい。」
少し駆け足になって兄さんに追いつく。
「・・・やっぱり、夜は寒いかな。」
そんなことを言いながら私は兄さんの腕に抱きついてみる。
「は、早く行くぞ。」
驚いて私を見たものの、私の腕を払うようなことはせず、兄さんはまたすぐに前を向いて歩き出した。
街灯に照らされた兄さんの顔が赤くなっていたのを見逃さなかった。
それから少し歩いたところで、兄さんがぼそっと呟いた。
「今日はお前が島に戻ってきてから初めてのバレンタインだったんだな。本当に悪かった。」
「今こうやって兄さんと歩けているだけで、そんなことは忘れました。」
みんなから預かったものは、家に帰ったらちゃんと渡してあげますからね。
でもその前に、私が作ったチョコレートの感想を聞きたい・・・かな。
もしも「まずい」って言われたら、また来年頑張るから。
でも、もし「おいしい」って言ってくれたら、その時は・・・。
初めての企画に挑戦してみました。
やっぱり文章を書くって難しいですね(汗)
なんとなく伝わったでしょうか?
登場人物の名前を出さないように頑張っていたら、ちょっと変なところも出てきてしまったり・・・
拙い文章ではありますが、もしよければ感想等お聞かせ頂けると嬉しいです。
また、今日限定でweb拍手を特別仕様にしています。
こちらのほうも覗いてやってください。
・・・多分「やっぱりか」と思われるかも知れませんが(爆)
画像は3種類用意しました。
今日頂いたweb拍手コメントと記事へのコメントに対するお返事は、今日の夜に別記事にてお返事します。
え?
これの登場人物が誰かって?
分かる人だけ分かってください(笑)
よろしければ押してやってください→


・最近の記事 03月30日 大図書館の羊飼い-Dreaming Sheep- 多岐川葵 10月31日 Trick or Treat! 10月14日 ようやく四天王を倒しましたー。 10月11日 生きてます…よ? 02月20日 これはゾンビですか? 第6話「そう、私は死を呼ぶもの」 02月19日 お兄ちゃんのことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!! 第6話「兄は黒パンストの夢を見る」 02月18日 夢喰いメリー 第6話「夢邂逅」 |
この記事へのコメント
読ませせていただきました~。
ここで私がネタバレっていうか、登場人物が誰か言っていい
のでしょうか?一応伏せておきますけどね。
感想は、登場人物の描写がとても上手いと思いました。これも
この娘のことを知り尽くしてるってことなのか??ww言い回
しとか、口調なんかはまさにこの娘でした。今日がバレンタイ
ンと言うことで、あまりこういうネタを見たことがなかったの
で、新鮮な感じがしました。
実は今日は、眞子の誕生日だったりします。眞子のネタがなかったのは、永遠のサブキャラなんでしょうか?(眞子ファンの
方々、ごめんなさい)
ここで私がネタバレっていうか、登場人物が誰か言っていい
のでしょうか?一応伏せておきますけどね。
感想は、登場人物の描写がとても上手いと思いました。これも
この娘のことを知り尽くしてるってことなのか??ww言い回
しとか、口調なんかはまさにこの娘でした。今日がバレンタイ
ンと言うことで、あまりこういうネタを見たことがなかったの
で、新鮮な感じがしました。
実は今日は、眞子の誕生日だったりします。眞子のネタがなかったのは、永遠のサブキャラなんでしょうか?(眞子ファンの
方々、ごめんなさい)
2006/02/14(Tue) 09:09 | URL | オクレス #-[ 編集]
流石由喜さんですね。話の舞台と人物はすぐ分かりました。
いちおう知ってる人間なので想像しながら読ませていただきましたよ~。
ショートストーリーとしてかなり上手くできてると思います。(GJ
一回くらい2次元的なバレンタインを送ってみたいですねww
いちおう知ってる人間なので想像しながら読ませていただきましたよ~。
ショートストーリーとしてかなり上手くできてると思います。(GJ
一回くらい2次元的なバレンタインを送ってみたいですねww
いつもお世話になってます。
Web拍手も堪能させて頂きましたw
前から思ってはいましたが、やはり由喜さんは文章を御書きになるのが御上手ですね・・・。
同じ物書きとして非常に尊敬します。
まあ作品・キャラクターが何なのかについてはあえて触れませんがww;あのキャラの特徴を良く御捉えになってますね~。
独特の繊細な心理描写、いじらしい焼餅加減が堪りませんでした。
それから、間違い無く私の胸の中にも息づくあの作品の世界観がここに示されていたので、雰囲気に浸らせて頂きましたよ(^_^)
・・・1つ思ったのが、これはズ○○チでは無く、格好良くて好感が持てる方のヤツですね(笑)
素敵なバレンタインプレゼントのSS、本当にありがとうございました!
大変楽しかったです!!
では失礼しました~m(_ _)m
Web拍手も堪能させて頂きましたw
前から思ってはいましたが、やはり由喜さんは文章を御書きになるのが御上手ですね・・・。
同じ物書きとして非常に尊敬します。
まあ作品・キャラクターが何なのかについてはあえて触れませんがww;あのキャラの特徴を良く御捉えになってますね~。
独特の繊細な心理描写、いじらしい焼餅加減が堪りませんでした。
それから、間違い無く私の胸の中にも息づくあの作品の世界観がここに示されていたので、雰囲気に浸らせて頂きましたよ(^_^)
・・・1つ思ったのが、これはズ○○チでは無く、格好良くて好感が持てる方のヤツですね(笑)
素敵なバレンタインプレゼントのSS、本当にありがとうございました!
大変楽しかったです!!
では失礼しました~m(_ _)m
2006/02/14(Tue) 18:55 | URL | ARIA #-[ 編集]
いつも楽しんでます。
感想ですが、もうアレっすね。もどかしいよこの気持ち、切なくて涙がキラリ☆って口ずさんじゃいました(笑)久々のこそばゆさを頂きました。
これを読んでそういえば今日はバレンタインだったんだって気付く自分がいましたよ(涙)バレンタインプレゼントのSSありがとうございました。
感想ですが、もうアレっすね。もどかしいよこの気持ち、切なくて涙がキラリ☆って口ずさんじゃいました(笑)久々のこそばゆさを頂きました。
これを読んでそういえば今日はバレンタインだったんだって気付く自分がいましたよ(涙)バレンタインプレゼントのSSありがとうございました。
2006/02/14(Tue) 19:23 | URL | ミッチー #-[ 編集]
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